ペンギンとエコとニット、そして読めない本
自分の目の前の日常的な問題ですらいろいろあるのに、森友学園問題があったり、韓国大統領の弾劾訴追案可決があったり、南スーダンのPKO派遣を取りやめるなど、ニュースや報道も取り上げなければいけない事件が多かったりで、じっくり振り返る間もなく過ぎていったように感じる、今年の3.11でした。東日本大震災より6年が経ちました。
テレビ、ラジオ、ネットニュースにtwitter、いろんなメディアからこの6年間の復興の歩みについて、断片的ながらも見聞きしてきました。その中から個人的に気になるトピックがいくつかありますので、ここに書き残しておこうと思います。
水族館が好きだから気になるトピック:仙台うみの杜水族館
震災から3ヵ月後に仙台へ行ったのですが、その目的の1つがマリンピア松島水族館の赤ちゃんペンギンに会いに行くことでした。
parkandaquarium.hatenadiary.jp
そのマリンピア松島水族館が2015年5月10日に閉館してしまいました。主な原因は老朽化だそうです。昭和2年に開業した、日本で2番目に古い水族館でした。その昭和を感じるレトロさがここの魅力でもあったと思いますが、経営状態がよかったわけでもないので、残念ながら建て直しとはならなかったようです。
この地域の遠足の定番スポットだったようで、ちょっとググるだけで閉館を惜しむ声がたくさん出てきます。ここの水族館ファンの方たちが作った映像がマリンピア松島水族館のサイトの中にあるのですが、これがとっても素敵なんですよね。最近、繰り返し見てます。
↑注意:クリックすると音楽が流れます!
魚の写真もあるんですけど、手作り感満載の看板とか、レストランのきっとレトルトであろうカレーとか、中にある小さな遊園地とかの写真が思いの他多くって、これがなんか泣けてくるんですよね。こういう細部にこの水族館らしさがあって、そこにみんなの思い出があるんだろうな。
閉館にあたって気になるのが、ここで飼育されていた生き物や働いていた飼育員の方たちの行方なのですが、2015年7月に新しく「仙台うみの杜水族館」が開業し、大半がこちらに引き継がれているということです。
この仙台うみの杜水族館の経営には、八景島シーパラダイスも携わっているということで、海の偉大さ、自然のすばらしさ、そして動物の魅力が最大限に伝わる、工夫された展示が繰り広げられておることでしょうな。期待大!
6年前には隠れて見えなかった赤ちゃんペンギンも大きく成長して、広いプールをスイスイ泳いでいるのかな。
(↑ここのどこかに赤ちゃんペンギンがいたそうです・・・。)
成長した姿、見に行かねば!
エコに興味があるから気になるトピック:福島発電株式会社
震災被害の中でも、最も多くの人の人生を狂わせてしまった原発事故。
そんな原発事故の舞台となってしまった福島県は、「再生可能エネルギーの飛躍的な推進による新たな社会づくり」を復興ビジョンに掲げ、その意向をくむ形で2013年に福島発電株式会社が設立されました。2015年からは県庁の職員であった鈴木精一さんが代表を勤めておられるそうで、とあるラジオ番組に出演されていたことで、私はこの話を知りました。
「2040年までに福島県内のエネルギーのすべてを再生可能エネルギーで賄う」という目標を掲げており、現地入りしたジャーナリストの方々も「福島にソーラーパネルが増えた」と口々におっしゃってましたが、大規模なソーラーパネルをぞくぞくと設置しています。浜通りと呼ばれる福島の沿岸地域は、日照時間が長く平均気温が低いため、太陽光発電に向いている地域なんだそうです(※1)。
上記サイトでも、メガソーラー事業を中心に据えているような印象ですが、ラジオの中では会津若松・背あぶり山の風力発電や、小水力発電の推進など、他の再生可能エネルギーにも力を注いでいること、スマートハウス・スマートビルディングを推奨することでエネルギーの利用そのものを減らすなど、多角的な視点で100%再生可能エネルギーの目標を達成する、ということをお話しされていました。
福島県は日本でも3番目に広い都道府県で、会津・中通り・浜通りと3つの異なる地形や気候風土を持つ地域に分けられます。それぞれの地域特性を生かした様々な再生可能エネルギーが導入・検討できる、という意味で、日本で屈指の再生可能エネルギー先進県になり得るんじゃないか・・・、というのは私の素人考えなのですが、勝手に期待しています。
原子力発電に限らず、今のように大きな施設でがっつり電力を作って、広範囲の地域まで電気を届けるというような電力供給の方法は、人口減少が進む日本ではいずれ破綻しかねないよな、と思っています(電気に限らず、すべてのインフラも同様だろうけど)。再生可能エネルギーにもいろんな種類がありますが、概ねその地域の自然を生かして行われるものなので、コンパクトにならざるを得ない。でも、そのコンパクトさが、これからは逆にメリットになってくるんじゃないかな。
世界の時流も再生可能エネルギーへと向かっています。
投資家の人たちが、「社会貢献ではなく採算を踏まえて」化石燃料から再生可能エネルギーへと投資対象を転換させているらしい。そうやってお金の流れが変われば、再生可能エネルギーが当たり前の時代だって夢じゃないかも。すごく期待してる。 https://t.co/2Tc8iKEC6Q
— acorn (@acorn10103460) January 13, 2017
アパレル業界に身を置く者として気になるトピック:気仙沼ニッティング
ご存じの方も多いかと思いますが、気仙沼ニッティングは気仙沼を拠点とし、 地元のお母ちゃんたちによる手編みのニットを作っている会社です。2012年6月にほぼ日刊イトイ新聞で震災支援のプロジェクトとして始まり、2013年6月に株式会社として独立しました。
アパレルデザイナーとして日々仕事をしていて、ここ最近の関心事の1つに「ブランドとは何か」というものがあります。ブランディングに関する本は、それこそたくさん出ているし、何冊か持っているのですが、自分から見えている景色にぐっと引き付けられてないというか、うまく落とし込むことができていませんでした。エルメスやシャネルなど"ハイファッション"と呼ばれるようなブランド論は、あまりにも遠すぎて実感湧かないし、自分が実際手にすることができるレベルの服作りの現場では、ただブランドの看板をかかげているだけで中身が伴ってないんじゃないの?っていう気がしていて。
↑2年前の文章ですが、今読むと、ちょっと稚拙な文章ですね・・・。
気仙沼ニッティングは、そんな私にもとっても魅力的に感じました。商品も素敵だし、コンテンツもワクワクしながら読みました。
「人々が今、何を欲しているのか」「何を楽しいと思っているのか」「自分に何ができるのか」そういうアイディアのかけらをぐぐっと凝縮したものがまず中心あって、その「志」に人が集まり、作り手と伝え手、そしてそれを受け取るお客さんがいて、その結果がブランドになる・・・。
気仙沼ニッティングにかかわっている人の多くは、ブランド作っています!っていう気持ちはないだろうし(※2)、ブランドという文脈で語られること自体、もしかしたら嬉しくないことなのかもしれません。ですけど、ブランドは誰か1人が作ろうと思ってできるものではなく、気仙沼ニッティングに関わる人によって相乗効果的に作られていくものかも、「ブランド」というのはこうやって作られるのもなのかも、なんて思ったのです。
すごく抽象的ですけど、自分の中で一番腑に落ちたブランドの捉え方であり、その代表例が気仙沼ニッティングです。
気仙沼ニッティングには、いろんなコンテンツがあって、いろんなストーリーがあるのですが、私は特に糸井さんが気仙沼ニッティングのプロジェクトを思いついた、そもそもの話が大好きです。
ほぼ日刊イトイ新聞 - いいものを編む会社。ー気仙沼ニッティング物語
アイディアのかけらがうわーっとつながった瞬間って、ものすんごく嬉しいんですよね。
そして、ほぼ日上場おめでとう!
「利益をたくさん出せればうれしいが、それが第一の目標になるとずれていくと思う。最短かつ最効率で利益を得る会社が、人に喜ばれるとは思えない。」
— acorn (@acorn10103460) March 4, 2017
ほぼ日のような会社が上場し、市場で育っていくなら、日本もまだまだ大丈夫だと思える。https://t.co/YAunF2DaT8
こちらはやっぱりまだ読めません。
これ、読みたいけど、辛いなあ…。書評だけでもこんなに泣けるんだから。
— acorn (@acorn10103460) March 1, 2017
『魂でもいいから、そばにいて 3.11後の霊体験を聞く』忘却へのジレンマが、それぞれの物語を生み出す - HONZ https://t.co/TaiMbpbxx5
あとがき
私は直接的な被害を受けた立場ではないので、復興の現状を正しく伝えることはできませんし、報道に携わる職業でもないので、深く問題をあぶりだすような記事も書けません。そんな立場で震災や復興について何も書けないと思っていたし、書きたいことがあったとしてもやっぱりためらいがあり、震災2年目以降は特に震災に触れた記事は書いてきませんでした。
気仙沼と東京を行ったり来たりしてるうちに、やっぱり、自分たちの無力さを感じるんです。たいしたことはできないっていう実感を持つ。「自分にできると思うなよ」っていうのは、最初から言ってたことなんだけど、つくづく思うんですよ。現地を知ると、ますます思う。「自分じゃなきゃできないことをしたいんです」っていう言い方も、ぼくはぜんぜん違うと思ってた。頭にあったのは、「なにをやったら、すこしでもよろこばれるかな?」それだけでしたね。そういうことを探しながら、気仙沼で取材をしてたつもりなんですよ。 で、取材をしてるあいだに、問わず語りでいちばん聞こえてくるのは、「忘れないで」、だったんです。
糸井さんのようなことはできないけど、忘れないでいることだったら、関心を向け続けることだったら私にもできるぞ、と。こんな立場だからこそ気になるニュースがあって、こんな立場だから書ける記事というのもあって、今この位置から見える景色を書くのもありかな、そう思ってこの記事を書くことにしました。
3/31から4/1にかけて、福島の4つの町村で避難指示が解除されました。避難指示が解除されたね、めでたしめでたしとはならず、本当に人が住んでも大丈夫なのか、住んだとしてもインフラなど人が住める状態なのか、様々な問題があるようです。人々が今まで通りの生活を送れるようになるまで、関心を向け続けようと思います。
※1: 気温が10度上がるとソーラーパネルの発電効率は5%下がる、ということもラジオでおっしゃってました。太陽光発電は太陽の光が当たればいいってもんでもないのですね・・・。
※2:代表取締役の御手洗さんが、下記のサイトで「ブランディングとかよくわからないですし・・・」とおっしゃってます。「最高級の編みもの、仕事の誇りに」 気仙沼ニッティングの御手洗瑞子さんに聞く、ある東北の働きかた
↓FeedlyやTwitterでブログの更新情報を受け取れます。
《ブログの更新情報他、いろいろ呟いてます》